<1・化け物が嗤う>

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 パソコンに突然届いだメール。リンクをクリックした先で、いくつかの必要項目を入力する欄があった。  自分の本名、それからなりたい外見があるならその詳細。欲しいチート能力に、行きたい異世界のタイプ。予想外だったのは、“一緒に異世界転移させたい人間はいますか?”という項目だった。 『チート能力を与えられるのは、貴方だけですので安心してください。  貴方は、貴方が望む人材を一緒の異世界に連れて行くことが可能です。  異世界を一緒に楽しみたい方、あるいは復讐したい相手を連れていくといいでしょう。  貴方のチート無双能力に、その同行者はけして勝てません。  全ては、貴方の意のままとなるのです』  その言葉に、すぐにコウジの腹は決まった。自分が選んだ能力は、“どんな相手でも自分の想いのままの雌奴隷にできる”能力だ。女に限定していないので男にも効くだろう――それこそ、男を女体化させて意のままにすることもできるに違いない。  連れて行ける人間として選んだのは、クラスで一番のイケメンの姫島蒼生(アオイ)。そして一番の美少女である遠藤小夏(えんどうこなつ)だった。  姫島蒼生はサッカー部に所属するストライカー。いかにもジェニーズ事務所にいそうな細身のイケメンで、クールなところもあるが面倒見がいい性格と評価され男女ともに好かれている忌々しい存在だった。いつも自分と違って、クラスの輪の中心にいる。頭がいいので、勉強を教えてもらっている奴も少なくないようだった。自分が一番嫌いなタイプだ。こういう奴ほどぐしゃぐしゃに踏みつぶしてやりたくなるものだる。  遠藤小夏は、清楚なお嬢様系の美少女だ。いつも物静かに読書をしている。彼女も成績が良く、料理上手でいつも自分で弁当を作ってきているようだ。実は、このクラスに入って真っ先に一目惚れした相手だった。だが、当の本人は自分のことなどアウトオブ眼中と言わんばかり。無視をするか、たまに目が合うとまるでゴキブリでも見るような眼でこちらを見つめてくるのである。恋愛感情が憎しみに変わるのは時間の問題だった。自分を馬鹿にしてきた罰、その体にじっくりと教えこんでやりたいものある。 ――けへへ、このバカどもに、俺のチート無双能力を見せつけてやる!俺なしじゃいられない奴隷にして、身も心もズタボロにして飼い殺してやるぜ!  これは、正当な復讐だ。  今まで不遇だった自分に、神様が与えてくれたチャンスなのだ。そう確信していた。 ――ほい、送信!  そう、今から思うと不思議で仕方ないのである。何故自分は、この胡散臭いウェブサイトの存在を全く疑わなかったのだろう。ボタン一つで異世界転移が本当に実現するのなら、今頃大騒ぎになっているはず。どこの迷惑メールだと疑うのが普通であるし、己にだってそれくらいの理性はあったはずだというのに。  恐らく、そのメールが到着した時にはもう、自分は魔法にかかっていたのだろう。――人を数人、意思を問わず遠隔で異世界転移できる、まさに“神”と呼ぶほどの力を前にして。
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