<2・ようこそ、異世界へ>

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――おいおいおい、やっと面白くなってきたところだってのに、何でここで目を覚ますんだ!空気読めやクソがっ!  コウジの願いも空しく、彼は暫く呻いた後、ゆっくりと眼を開いた。暫く緩慢に瞬きをした後、じっとコウジの方を見る。そして。 「……あ?……お前、大久保、か?」 「!!」  何で自分だとわかったんだ、コイツは。コウジは口をあんぐり開けたまま固まった。確かに、目元や髪型に名残はあるのかもしれないし、服もいつも着ているシャツと大差ない(サイズは変わっているが)。それでも引きこもってばかりの私服の自分の姿を彼が見たことがあるとは思えなかったし、今の自分は元の“大久保コウジ”とは比較にならないほどカッコ良い姿に変貌しているはずだというのに。 ――何でわかったんだ、キモいやつ、いや俺は大久保なんてやつではなくて……いや、いや、思い知らせてやるならやっぱり正体を明かした方がいいわけで、いや、でも。  元々頭の回転が速い方というわけでもない。ぐるぐる考えて固まっているうちに、今度は別の方向から声がかかった。 『異世界転移してきた皆さん、ようこそおいでくださいました』  まるで拡声器でも使っているような大きな声だ。若い女性のもの、だということくらいしかわからない。ぐわんぐわん耳に響くほどの声は、どうやら空から降ってきているらしかった。ここまで大きな声では、どれほど暢気に寝ていた人間であっても目を覚ましてしまうこと間違いなしである。 「うーん……」  小夏が身じろいだのことに気づいて、思わず舌打ちした。眠っている間に能力を試したり、せめてちょっとした猥褻行為くらいひとしきり済ませてやりたかったというのに。  イライラしながら大樹の下から飛び出し、曇天を見上げる。声の主、らしき人物の姿は見えなかった。どうやら自分達が見えない、遠い遠い場所から特殊な能力か何かで語りかけてきているということらしい。恐らく、自分を異世界転移させた“メガミサマ”とやらなのだろうとあたりをつける。 『此処は、あなたがたの言うところの“異世界”。魔法が使え、モンスターがはびこる、皆様が希望した通りの“中世ヨーロッパ風の異世界”となっております。……今回のメールにより、異世界転移を希望した、皆さん。皆さんには望んだ通りのものが与えられています。チート能力に、同行者、中には自分の望んだ通りの容姿という方もいらっしゃるでしょう。全てが、皆さんの思いのままです。ただし、能力は非常に強力すぎますし……十分気を付けて使ってくださいね、間違っても使い過ぎることのないように。行き過ぎれば……』
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