<3・復讐の始まり>

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<3・復讐の始まり>

「どういうことなのか、説明して」  コウジの能力は、戦闘系で無双するタイプではない。ゆえに、あのスタート地点でいきなりモンスターに襲撃されたら非常に困ったことになったわけだが、幸いメガミサマもそこまで鬼ではなかったらしかった。コウジ達がいた丘の上は、小さな町のすぐ近くだったからである。  ポーチの中の財布にはこの世界の通貨と思しき金貨がたんまり入っていた。ひとまず最初はこの資金でどうにか生活を組み立てろということなのだろう。宿屋に三人で入ったところで、ついに小夏が怒りだした。意外にも蒼生の方は、やや青ざめてはいるものの黙ってついてきている。状況を飲み込むまで時間がかかるタイプなのかもしれない。 「異世界転移って、何?どうして私達を連れてきたの。私も蒼生君も、全然あんたと仲良くなんかないと思うんだけど」 ――俺のことは苗字のくせに、姫島のことは名前で呼ぶのかよ。  これだから顔面差別主義者は。いつもだったら怒りのまま大型掲示板にでも晒し上げてやるところだが、今日の自分は機嫌がいい。多少の暴言は大目に見てやろうという気にもなる。どうせこの後自分の能力を使われて、心身ともに支配される結果になるのだから。 ――いやいや、心を支配するのは後でもいいか。まずはカラダを屈服させて、絶望する顔を拝ませてやった方がいいなあ?  嫌いだ、醜い、ありえない。そう思っていた相手ナシではいられない身体になっていく自分に絶望して、どん底に落ちる顔を見た方が面白そうだ。そうでなければ意味がない。自分はこいつらに復讐するために、一緒に異世界に連れてきたのだ。最初から心まで自分の虜にしてしまっては、絶望感を味あわせることができなくなってしまう。 「お前ら、何で自分が呼ばれたか本気でわかってねえようだなあ?」  クラスで、こんな風に堂々と彼等と話したことはなかた。むしろ、クラスの誰が相手でも自分は萎縮してしまい、どもってしまってまともに会話することができなかったように思う。本当に、世界は理不尽にできている。何故自分のような弱者であり被害者が遠慮して道を譲り、彼等のような傲慢なだけの連中が堂々とわが物顔で闊歩するのか。自分はただ少し気が小さいだけで、少しだけ容姿に恵まれなかっただけの人間なのにいつも冷遇されてばかり。自分にだって意思はあるのに、まるで空気のようにその心は黙殺されてばかりだったのだ。  そう、彼等はその、自分を虐げたクラスの代表として呼ばれたのである。この二人がいじめの主犯だったわけではないが、それでも関係ない。  恨むならいじめを止めなかった己と、“大久保コウジなら苛めてもいい”と愚行を繰り返したいじめっ子どもを恨めというものだ。
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