店名は『あてぃっく』

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店名は『あてぃっく』

「ね?今度はどうかな?」 「う~ん、ピントは良くなったけど…なんか違うなぁ。」 「じゃあ、申し訳ないけど、やっぱり陽介君に頼もうか。」 「うん、それが良いな。」 私達は、二人とも写真が下手だ。 今のデジカメは簡単なのに、要するにセンスがないんだろう。 だから、なかなか良い写真が撮れない。 「メニューが出来たら、ほぼ完成ね。」 「あぁ、長かったな…」 彼は店の中を見渡した。 私も彼の動作に倣う。 ついに、私達の夢が現実になるのだ。 誰もが寛げる、居心地の良い喫茶店を開くこと… 長年思い続けて来た私達のその夢が、ようやくここまで育ったのだ。 資金が乏しかったから、調理器具等はリサイクルショップで買い揃えた。 でも、その分、食器にはこだわりお金をかけた。 うちのウリは、喫茶店の軽食とは言えないようなこだわりの食事と、女の子なら絶対にときめく可愛くて美味しいパフェ。 食事は主に彼が考え、私はスィーツを担当した。 お互いに体重が増える程、試食を繰り返し、納得するまで話し合って二人でメニューを考えた。 あとは、そのメニューの写真を撮って、メニューを作るだけだ。 私の従兄弟はプロのカメラマン。 だから、彼に頼めば間違いないけど、でも、逆に喫茶店のメニュー写真を頼むなんて、なんだか申し訳ないような気がして… だけど、私達の写真はあまりにも下手くそだ。 これじゃあ、せっかくの料理も台無しになる。 だから、やっぱり頼むことにした。 きっと、素晴らしいメニューが出来ることだろう。 私達は、メニューを頭に思い描きながら、顔を見合わせて微笑んだ。
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