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お祝い
(はぁぁぁ~~……)
くしゃみが止まらない。
目はかゆいし、鼻水は止まらない。
頭はぼーっとする。
ついに、花粉症デビューしてしまった。
僕は花粉症にはならないと、何の根拠もなく思っていたけど、そうはいかなかったみたいだ。
*
「ただいま!」
「お帰りなさい!」
家に帰ると、テーブルにはご馳走が並んでいた。
僕の好きなちらし寿司をメインに鯛の焼き魚、フルーツにスイーツと色とりどりだ。
「何?何かの記念日?」
「いやぁねぇ、あなたの花粉症デビューのお祝いよ。」
「なんでそんなものを祝うんだ?」
「だって、花粉症デビューの平均年齢は今11.58歳だって言われてるのよ。
それが、50近くなってやっとデビュー出来たんだから、そりゃあお祝いでしょう。」
僕の妻は、かなりのポジティブ人間だ。
そして、時々、こんな風におかしなことをしては、僕を驚かせる。
「さぁ、早く座って。」
妻がちらし寿司を取り分けてくれた。
ちなみに、妻は料理上手だ。
特に、ちらし寿司は彼女の得意料理のひとつだ。
「ありがとう。」
今日のちらし寿司も絶品だ。
酢は酸っぱすぎないし、錦糸卵はやや甘い。
海鮮も新鮮だし、本当に美味い。
「良いなぁ。私なんて、まだデビュー出来ないのに。」
「花粉症デビューなんて、何にも良くないよ。」
「そんなことないわ。まわりの皆と共感しあえるし、花粉症になるのは進化した人間だって感じがするもの。
とても素敵よ。」
「そうかなぁ?」
「そうよ。私、とっても羨ましいわ。」
その後も妻は、花粉症になった僕を褒め続けた。
その話を聞いてるうちに、僕はまるで催眠術にかけられたみたいに、なんだか花粉症になったことが幸せみたいに感じてきた。
妻のおかげで、花粉症との付き合いも、少しは楽しいものになりそうだ。
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