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異形の者は底無しの体力まで与えたのか、アストゥトはたった18人で、何千人もの兵士達を虐殺していく。
フリッシュは剣と銃で、弾が切れたら剣と拳で。トントはは常人離れした怪力で。イディオはライフルの弾が無くなると、銃身で殴りつけた。
他の傭兵達もそれぞれの武器で、兵士達を殲滅していった。
あれだけ酷かった砂埃も、今は兵士達の死体と血で落ち着いている。
血塗られた殺戮は真夜中まで続いた。アストゥトは逃げ惑う兵士達まで殺し、生き残った兵士はほとんどいない。
「ふぅ、これで大方殺せたか?」
積み上がった死体の山に腰掛けながら、フリッシュは葉巻を燻らせる。すっかりリラックスしているフリッシュを見上げながら、イディオは自分の肩をさする。
「なぁ、フリッシュ、いい加減……」
「ソティラスは……」
フリッシュの声は夜風にかき消されてしまい、イディオの耳には届かなかった。
「え? なんか言ったか?」
「ソティラスだよ! アイツを探すんだ! 今すぐ探せ!」
フリッシュが声を荒らげると、イディオ達は顔を見合わせる。そんなイディオ達に腹を立てたのか、フリッシュは葉巻を投げ捨て、死体の山から降りて、近くにいたトントの胸ぐらを掴んだ。
「アイツは虫1匹殺せねーんだよ。そんな奴を放っておけるか! アイツはカエルレウスの野営場にいる。もしそこにいなかったら、近くの街でもカエルレウス兵の死体でもいいから探せ! 俺は野営場を見てくる」
フリッシュはトントを離すと、カエルレウスの野営がある方向に歩いていった。
「フリッシュの奴、なんであんなにソティラスにこだわるんだ?」
アストゥトのひとりが、小首をかしげながらフリッシュの背中を見る。大きな背中は振り返る素振りもなく、徐々に小さくなっていく。
「そうか、お前は知らないのか」
「おい、やめよけよ」
イディオが口を開こうとすると、トントが小突いた。ただならぬ雰囲気に、仲間達は好奇の目でふたりを見つめる。
「もういいじゃねーか。事情知ってる俺達だって納得してないんだ。こいつらだって、納得できないだろ。そんな状態で、フリッシュについていけって言うのか?」
「まぁ、そうだけどよ……」
トントが再び口を開く前に、イディオは死体の山によりかかるようにして座り、ライフルを抱きかかえる。
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