臙脂色の時代

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 その頃、カエルレウスの城でも同じようなことが起きていた。針金男ことフェアラートが玉座に座り、その横ではアストゥトの下っ端達が、国王を取り押さえている。  カエルレウスの使用人達は、フェアラートの命令で出払ってしまっていない。 「ソティラスとやらが見つかったら、我々は開放してもらえるんだろうな……?」  国王が恐る恐る聞くと、フェアラートは鼻で笑った。 「そう思いたいならそう思っとけ。長生きしたいなら、余計な口を聞くな」  フェアラートはめんどくさそうに言うと、あくびをした。  ベルメリオ城、夜。謁見の間の玉座にはフリッシュが座っている。その隣では国王が罪人のように後ろ手に縛られ、地べたに座らされている。下っ端達は国王の背中を踏みつけ、彼の首に剣を近づけて残虐な笑みを浮かべている。  家臣や残った兵士、使用人や国民達は、恐怖と不安に震えながら、国王を見守っている。 「これだけいたのに、ソティラスは見つからなかったと?」  フリッシュが重々しい口調で聞き返すと、見回り兵は項垂れた。 「申し訳ございません……。国も戦場も探し回ったのですが……」  見回り兵が言い訳をすると、沈黙が流れる。気まずさと重苦しさにフリッシュを見上げると、彼はため息をつき、国王を捕らえている下っ端に視線をやる。 「殺れ」 「おう!」  下っ端達は嬉しそうに返事をすると、王の背中に、腹に、剣を突き刺した。剣を引き抜くと返り血が盛大に飛び散り、国王の近くにいた者にかかり、フリッシュの頬にまで飛んだ。フリッシュは返り血を親指で拭って舐めとると、残忍な笑みを浮かべて彼らを見下ろした。 「たった今から、この俺がベルメリオの国王だ! 俺に逆らう奴は、女子供でも年寄りでも容赦しねぇ」  邪悪な新国王の宣言に、その場にいた民は絶望に打ちひしがれ、涙を流した。
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