臙脂色の時代

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「そのことだがフリッシュ、フェアラートは……」 「俺達を裏切ってるんだろうな」  イディオの言葉を遮るフリッシュは、寂しそうに目を細めながら言う。 「俺は、お前達を家族だと思ってる。けど、フェアラートと、アイツと一緒にカエルレウスに行った奴らは、そうじゃねえ。んなこたぁお前に言われなくても分かってる」  フリッシュはフェアラート達も信じていると思っていたイディオは、目を丸くする。なんとなくフェアラートを疑っていた仲間達も、驚いてフリッシュを見つめた。 「今回フェアラート達にカエルレウスを任せたのは、裏切り者達を消すためだ。どうせアイツらは、ソティラスをまともに探しちゃいねーさ。カエルレウスを乗っ取った後、俺達を潰すために動くことくらい、分かってる。だからよ、俺達の手で裏切り者を始末するんだ」 「けど、どうするんだ? あいつらだって、俺達同様、永遠の命を持ってるんだろ?」  トントの質問に、フリッシュはいたずらっ子のような笑みを浮かべる。  昼過ぎ、カエルレウスの城に客人が来る。客人達は使用人や兵士を押しのけ、謁見の間に入ってきた。 「よぉ、フェアラート。こっちの玉座の座り心地はどうだ?」  客人、フリッシュは玉座に座るフェアラートを見上げながら、親しげな笑みを浮かべる。その後ろでは、トントと数人の下っ端が、つまらなそうな顔をして立っている。 「フリッシュ! ここに来るのはまだ先だと思ってたんだがな」  フェアラートも人懐こい笑みを浮かべると、玉座から降りてフリッシュの前に立つ。フェアラートと一緒にいた下っ端達も、フリッシュ達を囲むように近づいてくる。彼らとの距離が1m未満になったところで、フリッシュは殺意に目をギラつかせ、命令を下す。 「殺れ」  フリッシュの一言で、絢爛豪華な謁見の間は戦場と化す。トントが後ろ手に持っていた斧を振り回し、フェアラート側の人間を真っ二つにしていく。フリッシュは裏切り者達の肉体に、鉛玉を撃ち込んでいく。  下っ端達は真っ二つになった体を、別の袋に入れて縛り上げた。
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