臙脂色の時代

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「どういうつもりだ、フリッシュ!」  麻袋の中で、フェアラートが喚き散らす。 「お前達が裏切るのは分かってたからな。取り返しがつかなくなる前に処分すんのさ」  フリッシュの言葉に、フェアラートは狂ったように笑い声を上げる。 「俺達は不死身なんだぞ!? どうしようっていうんだ! こんな袋だって破ってやる!」  上半身が入った袋は、どうにか出ようと内側から麻袋を掴む。フリッシュは麻袋を床に叩きつけると、手の上で思いっきり飛び跳ねる。ゴギュッ、と嫌な音がして、麻袋に血が滲む。 「何度でもその腕をへし折ってやるさ」  フリッシュ達は急いで外に出ると、馬車の荷台にある木箱に上半身と下半身、別々にして入れた。隙間無く詰めて蓋をすると、馬車が揺れる。下っ端達は木箱の蓋を釘打ちしていく。  馬車はカエルレウスの森の奥にある洞窟前に来てようやく止まった。洞窟の前でイディオと数人の下っ端が、退屈そうにフリッシュ達を待っていた。アストゥトはかつて仲間だった者達が入った木箱を洞窟の奥に置くと、木箱にダイナマイトを設置していく。天井や壁には、イディオ達が設置しておいたダイナマイトがあった。  ダイナマイトの導火線は異様に長く、すべてを設置し終えると、導火線はひとつにまとめられる。  イディオ以外のアストゥトが馬車で森を離れると、ひとり残されたイディオは、導火線に火をつけて全速力で洞窟から離れる。  3分後、洞窟は大爆発した。爆風で石や枝が飛び散り、洞窟からかなり離れた細身のイディオも吹き飛ばされる。 「うおぉっ!?」  イディオの体は近くにあった岩に叩きつけられ、肋骨を数本骨折、内蔵破裂と致命傷を負った。鼓膜も破れ、体には無数の切り傷もある。  傷は見る見る塞がっていき、1分もするとイディオは起き上がり、服についた土埃を払った。 「ったく、いくら俺が俊足だからって、無傷でいられるところまで逃げられるかってーの。にしても、これで死んだの何回目だ?」  イディオは自分が死んだ回数を指折り数えたが、片手の指がなくなったところでやめた。 「こんなことしても、意味ねーか」  結論を口にすると、カエルレウスの城までのんびり歩いた。フリッシュには早く来いと言われていたが、急いで行ったところで、自分の仕事はもうなくなっているだろうと考えた。
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