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イディオが城に着いたのは、夜が近い夕方のこと。謁見の間では、ベルメリオの様に使用人や家臣達が怯えている。
「おせーよ」
「あの森から徒歩で来りゃこんなモンだ」
イラ立つフリッシュに悪びれもなく言うと、イディオは玉座の階段に座った。いくら疲れを感じない体になったとはいえ、あれだけの距離を歩けば心が疲れる。それとは別に、説明しがたい疲労感があった。
「おい、お前が座るのはそこじゃねーぞ。イディオ様」
「は?」
フリッシュに様付けで呼ばれ、素っ頓狂な声が出る。フリッシュを見上げようとすると、頭に重たい何かを被せられた。
「こっちの国は、お前に任せた。お前なら、信用してもいい」
まだ状況が理解できず、被せられたものを取って見ると、カエルレウスのナショナルカラーである青を基調とした王冠だった。
王冠を取られ、再び頭に乗せられると、今度は強引に手を掴まれた。フリッシュを見上げると、彼はいつの間にか赤を基調とした王冠を被っている。
「今からカエルレウスの国王は、ここにいるイディオだ! そしてベルメリオとカエルレウスは同盟を結ぶ!」
その言葉と共に、握られた手を突き上げられる。
「おい、祝福しろよ」
フリッシュが舌打ちすると、家臣や使用人はぎこちない歓声を上げた。こうして臙脂色の時代が本格的に始まった……。
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