臙脂色の時代

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 ベルメリオは一気に変わってしまった。(まつりごと)はすべて家臣達が執り行い、国王であるフリッシュは、ほぼノータッチだ。フリッシュが口を出したことといえば、税金の引き上げだけで、民を苦しめる結果となった。  税金が払えない家は娘や妻を奪われ、フリッシュの慰みものにされた。  フリッシュは朝昼晩肉を食らい、日中はソティラスを探し回り、夜は飲んだくれた。街を歩いて好みの女がいればその場で抱き、欲しいものがあれば奪う。あまりにも横暴な国王に、国民達は憤りを覚えた。  そんな国民達にも、希望がないわけではない。ソティラスを見つけ出せば、賞金が手に入る。  国民達は考えた。ソティラスという青年は、国王にとって大事な人に違いない。ソティラスを見つけ出せば、きっとこの地獄から開放されると。  彼らは血眼になってソティラスを探すが、一向に見つからない。  ソティラスに似た青年を見つけて献上するも、すぐに偽物だとバレ、青年と献上した者本人はもちろんのこと、その家族達も(はりつけ)にされ、処刑された。 「自分達の子供が大人になる頃には、国王が変わるだろう。それまでの辛抱だ」  大人達はそう信じていたが、淡い希望は見事に打ち砕かれることになった。目の前で愛する妻を犯された青年が、その場で彼の背中に包丁を突き刺した。国王は服を脱いでより多くの国民に見せようと背を向け、包丁を抜いた。傷は一瞬で塞がった。 「俺は永遠の命を手にしたんだ! 殺そうとしても無駄。こうなっておしまいだ」  そう言って青年を包丁で刺し殺してしまった。国民達は絶望し、多くの者が他国に逃げようと決意した。  だが、国境にはアストゥトや兵士達が警備している。兵士に見つかれば、命を奪われることはない。運が良ければ、他国に逃してもらえる。  アストゥトに見つかった者は、皆殺しだ。男ならそのまますんなり殺されたが、女は辱めを受けた後、なぶり殺しにされた。  ベルメリオの国民は、死と陵辱に怯えながら生きていくしかなかった。
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