臙脂色の時代

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 ベルメリオと同盟を組んでいた国は、新王フリッシュの暴走を止めようと試みたが、自国に攻め込まれ、ベルメリオやカエルレウス同様に国王を殺され、支配されて終わった。  不死身のアストゥトだけが攻め込むため、ベルメリオの損失はほぼゼロ。それを知った他の同盟国は、どう説得しようが国王を殺されて国を奪われるからと、フリッシュの説得を諦めた。  イディオ国王のカエルレウスは、ベルメリオと違って平和なものだった。政を家臣達に丸投げなのはフリッシュと同じだが、税金の引き上げはしなかった。  気に入らない民を殺すことも、女を無理やり犯すこともしない。イディオが民に命じたのはただひとつ。”ソティラスを見つけ出せ”  自分達は傭兵であって、国王でもなければ盗賊でもない。フリッシュのしていることは間違っている。それがイディオの考えだ。  だが、フリッシュを止める術を持っていない。無い頭で思いつくのは、ベルメリオの民同様、ソティラスを見つけ出すことくらいだ。  きっとイディオが説得したところで、フェアラート達のように体をバラバラにされた後、瓦礫の下敷きにされて終わる。トントのような怪力があれば、瓦礫を押しのけることができるかもしれないが、イディオにあるのは銃術と俊足だけ。 「ソティラス、とっとと出てこいよ……」  陰鬱な空を見上げながら、気弱な青年が無事であることを祈ることしかできない。
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