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「僕が憧れていた、カッコいいフリッシュさんは、200年前に死にました。もう、休んでください。さようなら」
フリッシュが口を開く前に、ソティラスは彼を斬り捨てた。フリッシュは悲鳴を上げる間もなく、砂になって崩折れた。
フリッシュが殺される様を見ていた使用人達は、恐ろしさを上回る歓喜に打ち震えた。これで暴君に支配される時代が終わるのだと。
ソティラスは他の使用人や兵士達には目もくれず、城を立ち去った。
カエルレウス、謁見の間。家臣が何度も転びながら入ってくる。
「そんなに慌ててどうした?」
「べ、ベルメリオ国王が……!」
この家臣は仕事でベルメリオ城に行っていた。フリッシュが殺されたのを目撃し、慌ててカエルレウスに帰ってきたのだ。家臣は見てきたものをイディオに話す。イディオは黙って彼の話を聞くと、微笑を浮かべる。
「急いで逃げてください!」
フリッシュがいなくなった今、イディオならカエルレウスをいい方向に変えてくれると確信している家臣は、イディオを逃がそうとする。だが、イディオは玉座に座ったまま。
「俺は逃げない。そのまま、青い鎧に殺されよう」
「なぜです!? フリッシュ陛下がいなくなった今、あなたはきっと……」
すっと手を出し、家臣の言葉を制した。イディオが穏やかな笑みを浮かべていることに気づいた家臣は、息を呑む。
「俺は200年以上、この姿のまま生きながらえた。永遠の命は、心が疲れる。もう、休ませてくれ」
それが本心であると悟った家臣は言葉を失い、背中を丸めて謁見の間を出ようとする。
「最期に、ひとつだけ頼まれてくれるか?」
「なんでしょう?」
「アストゥトをここに集めてほしい」
「かしこまりました」
家臣は恭しく一礼すると、今度こそ謁見の間を後にした。
カエルレウスにいるアストゥトは、間もなく謁見の間に集まった。憑き物が落ちたようなイディオの顔を見た彼らは、自分達の最期を察した。
イディオと共にカエルレウスにいた彼らも、永遠の命に疲れていた。
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