紫戦争

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「けどよ、未だに人を殺せねーんじゃ話になんねーぞ?」 「いいんだよ。その代わりアイツは情報をひっぱり出して来てくれる。適材適所ってヤツだ」  フリッシュは燻らしていた葉巻を崖の下に放り投げると、笑みを浮かべた。  ソティラスは人を殺めるどころか、斬りつけることすらできないが、情報を集めることに長けていた。今も敵兵のふりをして指揮官に近づき、作戦を聞きに行っている。  街で情報を集めるにしても、フリッシュやトントのようなコワモテよりも、優しい顔つきの美青年であるソティラスが聞いて回った方が集まりやすい。ソティラスはアストゥトには今までいなかったタイプの人材だ。 「なんだかんだ言って、ボスが1番甘いよな……」 「あ?」  トントが小声で言うと、フリッシュは彼を睨みつける。どうやって誤魔化そうかとトントが慌てると、ベルメリオの兵士がこちらに向かって駆けてきた。 「フリッシュ様、国王様からです」  ベルメリオ兵の手には、ワインボトルが3本あった。フリッシュはワインを奪い取るようにすると、ラベルを見てニヤリと笑う。 「ケチな国王の割には、随分上等な酒をくれるじゃねーか。いつも以上に張り切ってやると伝えてくれ」 「はっ!」  ベルメリオ兵は敬礼すると、来た道を戻っていく。 「よぉし、仕事前に呑むか!」 「おう!」  フリッシュ達は森の奥に構えてあるテントに戻ると、そこにいた仲間達と一緒にひと騒ぎ。味の濃い料理を作らせ、グラスにワインを注ぎ、一気に飲み干す。十数人の荒くれ者に3本のワインは少なく、下っ端のひとりが自分達のウイスキーも開けようとする。 「待て待て、戦争前だ。それは終わってから呑もうぜ」  フリッシュが止めると、下っ端は渋々ウイスキーを置く。 「んなしけたツラすんなよ。おら、とっとと殺ってとっとと呑むぞ!」 「「「おう!!!」」」  フリッシュの言葉に、彼らは拳を突き上げる。それぞれ武器を装備すると、フリッシュを先頭に戦場へ向かった。
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