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向かいに座る独裁者の顔が歪んだ。そう思うと、コントロールパネルに遷移完了の文字が表示された。
「タイムトラベルが完了しました」
そう告げたときの彼は、何十年も君臨してきた中で決して見せたことのない表情をしていた。
それからどれくらいの時間が経っただろう。彼は過去に置き去りにした心が届くのを待っているようだった。
「今は何時だ?」
ようやく彼が口を開いた。独裁者らしい高圧な態度が戻っていた。
「時間は昼の十二時に設定しました」
「いい時間だ。見上げんばかりの摩天楼が青空に吸い込まれるように建っていることだろう」
彼は立ち上がるとハッチの前に仁王立ちになり、開けるように命じた。私は彼の後ろに立ち、パネルをタッチした。ハッチ開閉のアラームが鳴り、そして、ハッチが開いた。
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