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「そろそろ日も沈むし、帰っべ」
その声に手を止めて顔を上げる。
長い間丸めていた背と腰がギシリと痛んだ。
いつの間にかお天道様が傾いて、いろり火みたいに赤々と燃えている。
畑仕事の疲れか上げた頭がくらりと揺れ眩み、今が明けか暮れか分からなくなった。
──朝日と夕日は似てますね。
よく間違えるカカさんの照れ顔を思い出す。今日はないてないといいけどなあ……。
そのままぼんやりお天道様を眺めていると
「何してんだあ」
いつもオラの面倒をみてくれるヤジさんの声が聞こえて慌てて動き出す。
お天道様が完全に沈んでしまえば、辺りは暗くなる。出来れば明るい内に帰りたい。
考える事は同じで、他の仲間達はすでに泥だらけの体を遠くへ進めていた。
待っていてくれたヤジさんに合流すると、二人でやや先を急ぐ。
幾分も進まない内に仲間達と合流出来た。
が、なんだかザワザワと落ち着かない。
道の途中で不自然に仲間達は立ち止まり、何かを警戒するように密集している。
ヤジさんと二人で首を傾げる。
「なんだあ」
ヤジさんから声がこぼれると、1番近くにいたゴンゾウさんが前方を指差した。
指に沿って視線を滑らすと、沈むお天道様を背に知らぬ男が立っていた。
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