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【裏】
〜no-side〜
もう何年も使っているパーカーを着て、自分を守るものは何も持たず部屋をでる。
その時間の寮は人がいる気配は全くなく、
ただ静かに夜間用の明かりが揺らめいていた。
外へ出ると少しまだ寒い風が長い髪を撫でていた。
"これ"になんも意味は無い。
ある時を境に始まった"これ"は彼の不定期で行われる。
きっと彼を知っている人が彼を見たとき、誰もがこういうだろう。
「あれは誰?」
それくらいいつも纏っている雰囲気といまの彼の雰囲気は違っていた。
彼は噴水で立ち止まる。
その透き通った水になにか映っているかのようにただ一点だけを見つけていた。
しばらくすると眉を下げて彼はすぐそばにあったベンチに座った。
ただ虚空を見つめる彼は、悲しそうで、苦しそうで申し訳なさそうだった。
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