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見つけたからには副会長という立場上放っておくわけにもいかず、声をかける。
『あなた、どうしたんですか。こんな時間に』
そう声をかけると目の前の肩がビクッと揺れた。
目の前の人物がゆっくりと振り返る。
その所作の一つ一つに目を奪われた。
「…………。虚しいですね。お互い」
困ったように、泣きそうに笑うから。
どう答えればいいか分からなくなってしまった。
(お互い…………か。)
言葉に詰まったら私をみて目の前の人はゆっくりと話し始めた。
「人に素を見せるっていうのはすごくある一定の人にとっては怖いですよね。」
「だからきっと見せられる人が人を引き寄せる」
『……、ええ……そうですね。』
相槌を打ちながらいつも私の前にたつあの大きな背中を思い浮かべる。
(私もあの人のようになれたら……)
そう願わずには居られないほど、眩しい光を放つあの人のことを。
「でも、僕は怖い。あなたもそうでしょ?」
目の前の人はただその一言を残してそのままいなくなってしまった。
怖い。
怖いに決まってる。
ただ同じような人が自分以外にもいたということだけは唯一の安心材料となった。
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