愛の復讐

目が覚める。白色の真新しい天井が目に入る。
外は生温い梅雨の時期特有の風が吹いていて、私の頬を撫でていた。
どうやら私は病院に居るようだ。見慣れた景色が窓の外から目に入る。
梅雨の時期には珍しく、外は雨が降っていなかった。
私は死んだはずだった。確かに、其時の感覚が残っている。
親に腹部を数回、それも刃渡りが長い包丁で、何度も抜き差しされて、私はその時の親の顔が憎くてたまらなかった。
満面の笑みで私を殺そうとした父の顔は未だに頭から離れなかった。
しかし、何故、私はまだ生きているのだろうか？
暫くして、看護師と思われるきれいな女性が回診の手伝いだろうか、私の元へやってきた。
「鶴田ミサキさん。お元気ですか？体調の方は大丈夫でしょうか？」
私はこの看護師の言ったことに耳を疑った。
鶴田ミサキというのは、私のーーー、
亡くなった母の名前だった。