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/*#'%話「5秒後の世界」
深い深い森の中。その場にそぐわぬ一本の塔が聳え立っていた。
整然とした四角柱型で、等間隔に並んだガラス張りの窓が陽光を反射させて空の色を映し出している。
そこに住む人々はその塔を”魔女の塔”と呼称しており、この塔にはその名の通り多くの魔女が住んでいる。
見る人が見れば高層タワーマンションと呼びたくなる建造物。その麓の開けた場所に、少女・・・・・・と呼ぶにはまだ幼い二人の幼女が立っていた。
年の頃は十に届くか届かないか。しかし、そんな彼女らこそが”魔女の塔”の住人である魔女なのである。
彼女らの目の前の地面には炎の轍が走り、周囲の植物を焦がしながら煙を上げている。
一人の魔女が、その可憐な容姿に釣り合わないぶっきらぼうな言葉でもう一人の魔女に話しかけた。
「おぉ、本当に消えたな。とりあえず実験の第一段階は成功ってところか。 ケホッ・・・・・・でもこの炎が出るのは頂けないな、ドク。」
彼女が軽くせき込みながら何やら言葉を唱えると、指先から水の塊が現れ、燻る炎を消していった。この世界では魔法と呼ばれる力である。
ドクと呼ばれた魔女も、その美しい白髪と華奢な身体に似合わぬ口調で答えた。
「ムハハハ、それはロマンじゃ! あとはカップ麺でも食っておればそのうち戻ってくるじゃろ! ほれ、さっさと用意せい、レンシア。」
レンシアと呼ばれた魔女がため息を吐きながら何も無い空間からカップ麺を取り出した。
それをドクへ放り投げる様にして渡す。
「たまには金払えよな。」
「固いこと言うでない。先行投資じゃ先行投資。」
ドクは無遠慮に蓋を開け、レンシアに付き返すようにして注ぎ口を向ける。
「お湯も頼むぞい。」
「自分でやれよ・・・・・・。」
「ふぇ~ん、レンシアがワシが魔法の制御苦手なのを知っておってレンシアが意地悪言うのじゃ・・・・・・。」
「いや、その口調でふぇ~んとか言いながら瞳ウルウルさせても気持ち悪いだけだからな。」
魔法を使ってお湯を出し、カップの中を満たしていく。
蓋を閉じ、しばらくの沈黙が続いたあと、レンシアが口を開いた。
「なぁ・・・・・・アレが完成すれば、アイツらを助けられると思うか?」
どこか影のある真剣な表情で問うレンシア。
ドクは小さく溜め息を吐いて首を横に振って答える。
「さてな・・・・・・ワシには分からん。”それ”が許されることなのかも。よしんば出来たとして、その後どうなるかはワシにも全く想像がつかん。何事も無かったように世界は振舞うのか、はたまた――」
ピピッと電子音が鳴り、ドクの言葉を遮った。
彼女らが仕掛けていたカップ麺用のタイマーの音だ。
ドクは以降の言葉を飲み込み、カップ麺を啜り始めた。
レンシアもそれに倣い、自分のカップ麺を食べ始める。
「のう、新しい味のは作らんのか?」
「・・・・・・考えとくよ。」
実験の結果が分かるまで、あと―――
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