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「で、お願いって何?」
「鮫島沙都絵のことなんだけど」
腰を下ろした飛朗斗は、手を顔の前で組んで宙を見る。
「えっ? ど、どういうこと?」
鮫島沙都絵という名前を聞いて、隆敏はドキッとした。
沙都絵は同じサークルに所属していて、初対面の時からずっと恋心を抱いている相手なのだ。
「実はさぁ、みんなには黙ってたんだけど、俺、沙都絵と付き合ってたんだ」
「嘘っ!」
「いや、本当」
飛朗斗は真顔で答える。
「知らなかった。いつから……っていうか、過去形?」
「ああ、別れたんだよ。三日前に」
「そ……そう……」
初めて聞かされた驚きの事実に、隆敏は言葉を飲んだ。
沙都絵は整った顔立ちの美人だけど、ロングの黒髪が似合う真面目な子という印象だったので、その沙都絵が茶髪でギャル男の飛朗斗を選んだことが不思議だった。
「付き合いだしたのは、先月の初めだよ……」
飛朗斗は話を続ける。
「うん」
「最初は沙都絵に相談があるって呼び出されたんだ」
「へぇ」
隆敏は逸る気持ちを抑えて、まずは話を聞くことにした。
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