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「清水!」
中に入って飛朗斗に呼びかけるが、返事が返ってこない。
そもそもワンルームなので、返事云々の前に姿が見えなければならないのに、飛朗斗の姿がないのだ。
飛朗斗はいったいどこに行ったのか?
玄関に靴はある。
と……トイレの水を流す音と同時に、飛朗斗が顔を出した。
「でかい声でなんだよ?」
「あ、ああ、何だトイレだったのか」
「ああ、ところで、外に沙都絵はいなかっただろ?」
飛朗斗は冗談めかして聞いたのだが、隆敏の顔を見て不安な顔になる。
「いたのか?」
「そ……それが……」
「何だよ?」
「前の電柱に長い黒髪の女が立っていたから、思い切って声をかけたら……」
「沙都絵だったんだな?」
「いや……」
「何だ違うのかよ」
飛朗斗はホッと息を吐いた。
「振り返った顔に、目がなかったんだ」
「え? どういうことだ?」
飛朗斗が眉を曲げる。
「生きてる人間じゃなかった。幽霊だよ……」
「嘘だろ」
飛朗斗は急いでスマートフォンを、ポケットから取り出した。
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