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おじいさんとの出会い
「こんにちは。少年。」
「…こんにちは。」
「ここは少年の秘密基地かの。」
おじいさんはあたりを見回しながら尋ねました。
「そうだよ。僕の秘密基地なんだ。他の人には内緒にしてくれる?」
おじいさんは笑いながらうなずきました。
「おじいさんはどうしてこんなところにいるの?」
「気ままに散歩しとったら、ここにたどりついたわい。
せっかくじゃし、ここで少し休憩させてくれんかの。」
ユタカ君は、おじいさんを切り株に座らせてあげました。
持ち込んでいたお菓子を一緒に食べながらおじいさんとおしゃべりをしました。
「そろそろ行こうかの。」
よっこらしょとおじいさんは立ち上がりました。
「気をつけてね。」
ユタカ君がおじいさんを気づかいます。
一地面のあちらこちらに落ちているお菓子の袋をチラっと見ましたが、それにはふれずに、おじいさんはユタカ君に笑顔を向けました。
「そうじゃ。お菓子をもらったお礼に、この玉をあげよう。」
おじいさんは透明な玉をユタカ君に渡しました。
ちょうどユタカ君の手のひらにすっぽり収まる大きさでした。
その玉をつまんで木漏れ日にかざすと、キラキラと虹色に光りました。
「不思議な玉だね。手のひらで見ると透明なのに、光にかざすと色んな色になるよ!ありがとう。」
「ふぉふぉふぉ。そうじゃの。不思議な玉でな。3度だけ、別の動物の体験ができる玉なんじゃ。」
「別の動物?」
「何でもええぞ、玉を握って、『〇〇になりたい』と言ってみぃ。
そしたら望んだ動物になれるからの。」
ユタカ君は、疑いの目をおじいさんに向けました。
おじいさんは笑いました。
「信じんでもええよ。よかったら使ってみぃ。
この玉は、この場所でしか使えんからの。それじゃあの。」
そう言っておじいさんは秘密基地から出ていきました。
「あ、ちょっと待って!」
ユタカ君は慌てておじいさんの後を追いかけましたが、その姿はもうどこにもありませんでした。
ユタカ君は、おじいさんからもらった玉を見つめてました。
―この玉で、本当に他の動物になれるの?
まさかそんな物語みたいなことないよねと納得し、その日は玉を持って家に帰りました。
家に帰るとマルが尻尾を振りながら寄ってきましたが、ユタカ君は、おじいさんにもらった玉が気になって仕方なく、マルを軽く撫でただけで自分の部屋に戻っていきました。
ベッドに寝転がり玉を掲げて見つめます。
―だまされたと思って、一度試してみようかな。
好奇心には勝てず、ユタカ君は明日秘密基地で試してみることにしました。
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