宦官は永遠の愛を王に捧ぐ

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「後宮も私にお任せなさい。もう二度と争いなど起きようもない体制を、腐るはずのない世界を、二人で築いてやりましょう」  子に囁きかけるかのような甘やかな声は、奥底に強い信念と激情を孕み、鳳寿の鼓膜を揺らした。 「あなたは妃達に子を産ませなさい。私は嫉妬など致しません。あなたが愛しているのは私だけだと私は確信しておりますから。妃を抱いた後も忘れず私に愛を囁き、抱き締めてくだされば許してあげます」  くすくすと笑いながらも、まるで狂人のような眼差しで、華英は鳳寿を見つめる。 「そして生まれたあなたの子を、私は愛をもって正しく教育しましょう。国と民を狂信する、正しき王者に」  明るい未来の夢を描き、華英は楽しげに目を細めた。  鳳寿はその深淵の見えない闇色の双眸に魅入られ、固まるばかりだ。 「彼らに守られ、発展していくこの国が、永遠に残る私たちの愛の証です。……ねぇ、そうでしょう?愛しい私の王様」  ちゅ、と音を立てて、華英の柔らかな紅唇が、鳳寿の乾いた唇に触れた。  ぐ、と唇を押しつけられ、生気も魂も吸い取るように口腔内を掻き回される。 「華英……」  なすすべもなく床に押し倒された鳳寿は、口の中を弄られて荒く息をしながら、華英を見上げた。  吹っ切れたような顔をする恋人は、興奮に頬を染めながらも、純真な少年のように笑った。 「私はあなたと、この国を生むと決めたのです。私の幸せはここにある。それをあなたも、いい加減認めて下さい」  狂った目で捧げられる愛に、覚悟を決めろと迫られる強引さに、鳳寿は微かな後悔と、そして目も眩むほどの狂喜を覚えた。 「あぁ、そうだな、華英。……ずっとここに、俺の隣にいてくれ」  目の前の白い裸体を骨の軋むほどに抱き締め、その首筋に噛み付いた。 「お前は俺のものだ。もう二度と、手放そうとはせん」
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