93人が本棚に入れています
本棚に追加
「っ、な、……ど、うしたんですか、急に」
あまりの驚きで言葉につっかえながら、華英は強張った笑いを浮かべて振り向いた。
「急ではないさ」
鳳寿はまるで春のような穏やかな顔で、愛おしいものを見る目で華英を見つめている。
「この世に生きる誰よりもお前を愛している。そしてこの世に生きる誰一人として、俺よりお前を愛してはいないだろう」
あまりにも熱烈な告白に、華英は息が止まりそうになった。
血液が全身から心臓に集まり、凄まじい速さで脈を打っている。
顔からはむしろ血の気が引いていただろう。
月の下で青白く映る華英の顔をどう読み取ったのか、鳳寿は「案ずるな」と苦笑して、まるで幼子にするように華英の髪を撫でた。
「お前を押し倒すようなことはしない。……俺は、お前に相応しくないからな」
「え?」
自嘲するように呟かれた言葉の真意を尋ねようとした華英は、次の瞬間、唇の自由を奪われて瞠目する。
「ん……」
乾いた唇が、まるで花びらに触れるようにそっと合わせられた。
唇をこじ開けることもなく、舌を吸うこともなく。
まるで、羽が触れたかのような、優しい接吻。
「お前に手を出すのは、これが最初で最後だ、華英よ。俺はこの混乱を終わらせる。そして……この戦を勝ち抜き、王となる。そうしたら、俺はお前だけを見ていることはできない」
狂おしいほどの熱を秘めて華英だけを映す瞳は、けれどもっと遥か遠くを見つめている。
「ほうじゅ……」
最初のコメントを投稿しよう!