宦官は永遠の愛を王に捧ぐ

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 目の前で顔を歪める男の名を茫然と口にすれば、理由もなく華英まで泣きそうになった。  ただ、名を呼んだだけなのに。 「……愛しい華英よ」  己の執着を振り切るように、鳳寿は長く細い息を吐く。  わずかばかりの絶望を孕んだ切ない吐息が、華英の頬を撫でた。 「俺は、国のための王となり、民のための王となる。お前だけを想い、お前のために生きることは出来ない。……それでは、お前を幸せにすることなど、到底出来まい」  おどけたように言って、暴力的な恋情を抑え付け、全てを自己完結させた男は、まるで重荷を下ろしたような顔で笑った。 「馬鹿なことを言ってすまなかったな。……明日も早い。よく眠れ」  もう一度優しく髪に触れて、鳳寿は自分の天幕へ去っていく。  髪に触れる振りで、撫でられた頬が痛みを持っている気がして、華英は鳳寿に触れられた場所を右手で押さえた。 「なんて、勝手な」  戦乱の夜は更けていく。  震える詰り声をひとつ残して。
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