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「何を言っているのだか。お前の努力の成果だろう。ちゃんと誇れ」
「私ですから、当たり前です」
「まったく、素直ではないな」
鳳寿は肩を竦めて、意固地な年下の幼友達に目を細めた。
華英は、代々文官を輩出する文の名門・胡家の未子だ。
建国王の腹心にして友であった初代宰相・胡華月を始祖として、歴史に残る名宰相を何人も輩出している。
建国王の妹をはじめとし、何人もの王女が降嫁している胡家は、王家と並び最も古く、三百年以上続く家系である。
近年では中枢から遠ざかっているが、名門には変わりない。
現当主の嫡子にして唯一の男児である華英は、異母兄弟や従兄弟たちを含めて最年少であったが、今の世代の中では最も聡明で、初代宰相の再来と謳われている。
その才は学問だけにとどまらず、幼い頃より書画から歌舞音曲、詩歌に至るまで天才の名をほしいままにしてきた。
期待されすぎて性格が捻くれていることと、少々体が弱いことを除けば、弱点のない少年である。
胡家から久々の宰相が出るのではと、期待がかかっていた。
「なんにせよ、今日は酒盛りだな!武の俺と文のお前。俺たちがいればこの国は安泰だ」
「随分と大きなことを仰る。あと、私は酒は嫌いです」
「ではお前は甘い水でも飲んでおけ」
可愛げのない返答ばかりを繰り返す一個下の幼馴染に肩を竦め、柔らかく鳳寿は笑う。
文の胡家と武の楊家は権力争いの場でも敵対しにくいことから、代々良好な結びつきが続いており、お互いに持ちつ持たれつの関係を維持している。
この時代も、おそらくはそうなっていくと思われた。
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