宦官は永遠の愛を王に捧ぐ

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 ***  光の差し込まぬ不潔な地下牢で、一人の男が鎖に繋がれていた。  鍛え上げられた四肢は枷をはめられ、鎖に繋がれている。  申し訳程度に包帯が巻かれた左肩からは、半身が真っ赤に染まるほどに血が滲み出ていた。  右頬には痛々しい刀傷がそのままにされており、命を保つための最低限の治療しか施されていないことが明らかだった。 「これが『国』か」  低い声が、闇を震わせて響いた。 「これが『政治』か」  暗く淀み、光を失った目で地を睨み、憎々しげに呻く。 「これが、『王』か……ッ!」 「……そうですよ。アレが、当代の『王』です」  暗闇の中から、冷たいほどに落ちつきはらった声が答えた。 「……誰だ」 「チッ」  何も見えない闇の中で誰何すれば、さも忌々しげな舌打ちが聞こえてくる。 「あぁ、嫌だ嫌だ。臭いし、汚いし、捕まった間抜けは私の声すら忘れているし」 「……あぁ。華英、お前か」  暫くの思考の後で発された名前に、再び華英は高らかに舌を打った。  小さく光を灯した華英は、眩しそうに顔を歪める鳳寿を、思い切り見下した顔をして見せた。 「考えなきゃ分からないなんて、随分な話ですね。呆けたんですか」 「はは、すまないな……」  かつてのような軽口を叩くこともなく、鳳寿は力なく笑い、謝罪する。  うつろな眼差しを向けられ、華英は泣き出しそうな顔をした。 「とりあえず、ここから出ましょう」
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