宦官は永遠の愛を王に捧ぐ

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 強い声音の叱咤の後で、華英はふっと笑って告げた。 「北の丘に味方が待っています。そこまでは腕一本で頑張ってください」 「み、かた……?」  思いもかけない朗報に瞠目する鳳寿を満足げに見つめ返し、華英は鮮やかな赤い唇で笑みを形作った。 「あの昏君と、腐敗した政府に反感を持っているのは、あなただけじゃないってことです。……まったく、水面下で慎重に準備を進めていたのに、あなたが騒ぎを起こすから予定が狂いました」  平然と謀叛の企てを暴露する華英に、鳳寿は唖然とした。  腐敗した王朝で淡々と出世を重ねていた華英は、もう昔の綺麗な少年ではないのだと、自分の華英はもう消えたのだと、そう思っていたのに。 「お前、変わっていなかったんだな」 「当たり前でしょう。私は魑魅魍魎の欲に塗れても、己まで醜悪な悪鬼となり果てるような小物ではありません」  侮るな、とまっすぐに鳳寿の目を見返す華英は、幼い頃の誇り高く穢れない、澄んだ瞳のままだ。 「疑って、悪かった。……あと、計画をぶち壊して、すまない」  小さくなって謝る鳳寿は、華英の怒りを恐れた。  己の完璧な計算が崩れることを、華英は幼い頃から酷く嫌っていたから。  しかし、殊勝に過ちを認め謝罪した鳳寿に、華英は目を瞬いた後、子供のようにくしゃりと笑った。 「いえ、別に。……英雄が現れた時が、最高の好機ですよ」 「英雄?」 「ええ、あなたですよ、鳳寿」  思いがけない言葉に固まる鳳寿を楽しげに見つめ、華英は人差し指一本で、鳳寿の心臓を突いた。 「なってくださいよ、鳳寿。私達の……私の、英雄に」
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