猫と《裏世界》

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猫と《裏世界》

「……魔法少女って…俺は男だ!!」 もうすでに意味不明な現状だから魔法という非現実的なことは一旦置いておく。 ただ少女という自分の性別を無視した発言は置いておけない。 思わず口を挟むと黒猫は呆れた時の人間の表情のように半目で俺を見る。 「そんなこと知ってるにゃあ。 佐野陽平、男、17歳、帰宅部 授業中は頻繁に寝ていて、一度寝るとなかなか起きないのにゃん」 「げっ!なんで名前まで知ってるんだよ!」 知らない猫に名前を呼ばれ、背筋がぞわわっと震える。 猫は心なしか得意げにツンと上を向いて言葉を続けていく。 「お前のそのよく寝るところを見込んだのにゃ。お前には魔法少女の力を使って雑魚の魔物を倒してほしいのにゃあ」 「いやいやいやいや、なんで?」 「まずこの場所は現実の《裏世界》にゃ。裏世界は現実とリンクしてるけど、通常の生物はいない、魔物だけが生み出される世界なのにゃ」 猫が背を向けトコトコと歩き出す。 そして机の上にぴょんと飛び乗ると窓の外を見ている。 「この魔物が裏世界を破壊すると現実にも影響するのにゃあ。現実世界にはわかりにくいけど、急に建物が脆くなってたり、人々の動向が荒くなったり、異常気象が起こったり、病気が流行ったり…」 「そんなの今も普通にあることじゃん」 「そうにゃ。もちろん現実のすべてが裏の世界の影響じゃない。けど裏の世界が崩壊したとき、現実世界も滅ぶ。それは確実なんだよ……にゃ」 「ちょっ、お前!語尾わざとだろ!今忘れてたろ!」 鬱陶しい語尾を我慢して説明聞いてたらこいつ! 怒りの衝動のままに猫の頭をわしっと掴む。 「にゃー!!」 背後からの襲撃に猫はびくぅ!と跳ね悲鳴を上げると、俺の手に猫パンチを繰り出す。 「こういうマスコットキャラには語尾が必要って日本のカルチャーが言ってたのにゃあ」 「いてっ!」 反省の色もなく語尾を復活させた猫は爪を立てまんまと俺の手から逃れる。
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