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俺と猫
眩しさに目をこじ開けると、教室はすっかり西日で染め上げられていた。
周囲にクラスメイトは誰もいない。
「ふぁ…」
人がいないのをいい事に大口を開けて思いっきり欠伸をする。
すっかり寝過ぎたようだ。
俺の寝汚さは周知の事実なので、起こすような人はいない。
放課後のいつも通りの光景を暫しぼんやり眺め、そろそろ帰ろうと立ち上がる。
にしても、今日は一段と静かだ。
部活動に勤しむ生徒の声も聞こえない。
珍しいこともあるものだと思いながら立ち上がると、ドシーンッ!!という轟音と共に地面が揺れた。
「なっ…!なんだ!?」
「やぁっと起きたにゃあ。全然起きないから失敗したかと思ったのにゃ」
よろめきながらも何事かと辺りをきょろきょろ見渡すと、窓に黒猫がびったりと張り付いていた。
「………は…?」
「とりあえず大物は倒されたから早くこっちに来るにゃー」
ピンクの肉球がてしてしっと窓を叩く。
俺の見間違いじゃなければ、窓に張り付く猫の横っ面の口が声に合わせて動いてる。
「ね…、ね、猫が喋っ「そういうテンプレな反応はいらないのにゃあ」
愛らしい見た目とは裏腹にピシャリと冷淡な声で遮られ訳も分からず口を閉ざす。
なんだこれ、何が起きてるんだ?
先程の地面の振動のせいか、意味不明な状況のせいかは自分でもわからないが、覚束無い足取りで窓に近付く。
そして猫越しに見えた窓の外の景色に息を呑んだ。
グランドに巨大で真っ赤なドラゴンが横たわっていたのだ。
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