第五章 彼と二人きりで過ごす、愛しのひとときを

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──着てきた服を紙袋へ詰めてもらっていると、 「あっ、CEOが来られたようですよ」 スタッフさんがそう教えてくれて、後ろを振り返って見た。 「わぁー……」 現れた彼の姿に、思わず感嘆のひと声が口をつく。 涼やかなぺールグリーンのスーツの上下に同系色のネクタイを結び、同じグリーンの濃い色味のベストを合わせた彼のスリーピース姿は、いつにも増してファッショナブルで格好良かった。 「オレンジ色がとても似合っていて、綺麗だな」 「いえ私より、蓮水さんの方がもっと……」 言いかける私に、「主役は、君だから」と、彼が口にして、「グリーンにして良かったよ。君のオレンジとよく合う」にこやかに微笑んだ。 「それでは、楽しんでらしてくださいね」 スタッフさんからお店を送り出されると、 「あの、こんな素敵なプレゼントをありがとうございます」 と、改めて彼に頭を下げた。 「いや、いいんだ。言っただろう? 何よりも君が、私への最高のプレゼントだからと」 彼はそう言って、 「本当に綺麗だよ、鈴」 私の耳元にふっと唇を寄せた……。
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