第五章 彼と二人きりで過ごす、愛しのひとときを

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「君を、エスコートしよう」 彼から肘を折った左腕が差し出されて、右手を回してそっと腕を巻き付けた。 ホテルの廊下を一緒に歩くと、いやが上にも注目を集めて、たくさんの人たちに振り返られ、身の置きどころに困りうつむき加減になる私に、 「顔を上げておいで」彼が前を向いたままで口にして、 「私は、愛する君をこうして伴えることを、誇らしく感じているよ」 そう告げた──。 誇らしく……そうだ、さっき私も感じたように、愛する人への想いは、とても誇らしく幸せなものなんだと……。 「はい……」こくっと頷いて、顔を上げた。 「うん、それでいい。綺麗だよ、鈴」 「……はい」と、もう一度頷くと、愛しい彼と共にいられる悦びを胸に深く噛み締めた……。
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