第一章 スーツをスマートに着こなした、絵になる彼

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()(づか) (りん) 職業 フリーのイラストレーター イラストレーターなんて言えば、聞こえはいいかもしれないけれど、実際は雑誌の隅っことかにちょこっとイラストのカットを入れるぐらいでしかなくて、 胸を張ってイラストレーターなんて名乗れるほどの仕事量も、職業に見合うだけの給料も、まるで足りていないのが実情だった……。 「……このままじゃ、いけないよね」 ひとり呟いて、歩道脇の石造りのベンチへ、「ハァー」と肩を落として座り込む。 大した仕事もないままでは、この先食べてもいけなくなりそうで、今日だって出版社に思い切って営業をかけたのに、 すげなく断られた挙句に、言われたセリフが…… 『上手(うま)すぎて、味がない』 って……それって、褒めてるのか(けな)してるのかどっちなのよと……。 ……あぁ〜もう、そろそろイラストレーターの仕事も、諦めないといけないのかな……。 いつかは大成をなんて思っている内に、いつの間にかいい歳にもなっちゃったし……。 夢を追いかけるには、そろそろ限界なのかもと思ったら、ふぅーっとため息がひとつこぼれた──。
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