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やがて、私たちの出番が回ってきた──。
彼とはステージの両側から出て真ん中で合流をすることになっていて、ブーケを手にスポットライトの当たる場へと足を踏み出した。
あまり履き慣れないハイヒールで、一歩ずつ進んで行くと、右サイドから現れた彼がしなやかな指先を差し伸ばし、私の手を取ってくれた。
二人で並ぶと、一斉に周りから大きな拍手が巻き起こる。
肘を折り、みぞおちの下辺りに握った拳を当て、スッと背を伸ばした彼の立ち姿に視線を奪われていると、笑みが向けられ腕を組むよう促されて、彼の左腕にそっと右手を挿し入れた。
彼のタキシードの装いは、パールホワイトの地に、襟元は灰味を帯びたべビーピンクで色取られていて、裾の後ろが長く切れ込みの入ったテールコートスタイルになっていた。
また、中に着込んだジレは、襟のトーンに合わせたピーチカラーで、HASUMIの艷やかな色合いを存分に引き出したものになっていた。
「……タキシード姿、とっても素敵です」
彼だけに聴こえるような声で小さく呟くと、
「君のプリンセスライン(ドレスの裾がふわりと広がるデザイン)のウェディングドレス姿は、本当に綺麗で魅惑的だよ」
低く抑えた声音で囁き返された。
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