番外編 彼と二人、幸せに包まれる未来を夢見て

7/19
前へ
/223ページ
次へ
やがて、私たちの出番が回ってきた──。 彼とはステージの両側から出て真ん中で合流をすることになっていて、ブーケを手にスポットライトの当たる場へと足を踏み出した。 あまり履き慣れないハイヒールで、一歩ずつ進んで行くと、右サイドから現れた彼がしなやかな指先を差し伸ばし、私の手を取ってくれた。 二人で並ぶと、一斉に周りから大きな拍手が巻き起こる。 肘を折り、みぞおちの下辺りに握った拳を当て、スッと背を伸ばした彼の立ち姿に視線を奪われていると、笑みが向けられ腕を組むよう促されて、彼の左腕にそっと右手を挿し入れた。 彼のタキシードの装いは、パールホワイトの地に、襟元は灰味を帯びたべビーピンクで色取られていて、裾の後ろが長く切れ込みの入ったテールコートスタイルになっていた。 また、中に着込んだジレ(ベスト)は、襟のトーンに合わせたピーチカラーで、HASUMIの(あで)やかな色合いを存分に引き出したものになっていた。 「……タキシード姿、とっても素敵です」 彼だけに聴こえるような声で小さく呟くと、 「君のプリンセスライン(ドレスの裾がふわりと広がるデザイン)のウェディングドレス姿は、本当に綺麗で魅惑的だよ」 低く抑えた声音で囁き返された。
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3729人が本棚に入れています
本棚に追加