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ステージのランウェイ半ばくらいまで来ると、
「おめでとうございます!」
ふいに客席で見ていた社員さんの一人から、結婚式さながらの声がかけられ、それに続くようにあちこちから「おめでとうございます」との声が上がった。
さっき聞いたお話のように、社員さんたちが会社の代表である彼を心から慕っていることに改めて気づかされたけれど、まるで本番みたいな祝福ムードに包まれて照れが隠せないでいると、
「ああ、ありがとう」
彼が片手を挙げて応えて、「照れることはない。君は、私のただ一人のパートナーなのだから」と、耳元に密やかな声で告げた。
ランウェイの先まで歩いて来ると、熱っぽく火照った私の頬に、彼が手の甲でふっと触れた。
割れるような拍手が響く中、その音に紛れるように、
「幸せだよ」
彼が口にして、さらに熱くなる私の頬を、触れていた手でさらりと撫でた……。
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