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「大したことがないようには見えなかったがな……。それでさっそくなんだが、さっき描いていたものを見せてもらえないだろうか?」
そう促されて、
「はい、ですが本当にラフに描いただけでして、お見せするほどのものでも……」
拭えない恥ずかしさを感じながら、描いていたスケッチブックを渡した。
「やはりよく描けているな。君は、絵がとても上手いんだね」
ラフスケッチをそんな風に手放しで褒められると、なんだかこそばゆくもなるみたいで、「……そんなことは……」と、うつむいて首を振った。
「こんなに上手いようなら、仕事も忙しいんだろう?」
「…いえ、全く…」と、情けない思いで、力なく首を横に振る。
「……さっきも、出版社で門前払いを食らったばかりでして……」
「そうなのか? 私には、とても上手いと感じられるが……」
「上手いだけで、味がないらしいです」
編集者から言われたままを打ち明けると、
「……味は、あると思うがな……」
言いながら、自らの顔が描かれたイラストへじっと目を落とした。
「それはきっとモチーフがいいからだと……」
つい口を滑らせたところへ、
「……うん? 何か言ったか?」
ふいに顔が上げられて目が合うと、その紳士然とした整った顔立ちに、思わず赤面しそうになった……。
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