第一章 スーツをスマートに着こなした、絵になる彼

9/29
前へ
/223ページ
次へ
「こちらこそ、よろしく頼むよ。それと、もうひとつ君に頼みたいことがあるんだが……君は、誰か車の運転の出来る人を知らないだろうか?」 ふいにそんな話が切り出されて、 「……車の運転、ですか?」 どうしてそんなことをと、やや困惑しながら問い返した。 「ああ、急で申し訳ないが、君の知り合いでも友人でも身元がわかっていれば問題はないから、誰か車の運転が出来る人を紹介してもらえないか?」 言葉の端々に、だいぶ切羽詰まっているかのような雰囲気が感じられて、 「免許でしたら、私も持っていますが……」 と、口に出した。 「そうか。それなら、私の運転手もしてもらえないだろうか?」 唐突にそんな提案をされて、 「えっ、運転手を!?」 驚きのあまり大きな声が出て、慌てて自分の口を両手で押さえた。
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3729人が本棚に入れています
本棚に追加