ねえ、お父さん。

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ねえ、お父さん。

 ねえ、お父さん。覚えてるかな。  私がまだ幼稚園に通っている頃から、お父さんはたくさんの絵本や児童書を買ってくれたよね。私がすぐに字を読めるようになったことが嬉しかったのか、後からあとから本を買ってくれた。  私はね、お父さんのおかげで本を読むのが大好きになったんだよ。でもひとつだけ読めない本があった。確か『黒馬物語』っていうタイトルの本だった。なにが書いてあるのかわからなくて、生まれて初めて読書の挫折を体験したんだ。  大人になってから古本屋で『黒馬物語』を買って読んでみたの。あの作品は仔馬が一人称で主人公を演じている特殊な設定で、まだ幼かった私には少し難しかったのかもしれない。いま読んでみても実は結構難しいんだよ。  でも買ってくれて嬉しかった。ありがとう。
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