section 1

2/14
前へ
/387ページ
次へ
 前からずっと気になっていた鶏塩ラーメンは絶品だった。  透明感のあるスープは女性に人気なのも頷けるあっさりした味で、鶏のチャーシューも味が染みて肉厚だし、麺もコシがあって喉越しがいいのでいくらでも食べられそうだった。今日のランチは大当たりだ。  本当はデートで来たい店だったのになと思っていたら、テーブルに置いてあったスマホが光った。画面に浮かび上がった通知に麺を啜るのが止まる。 『土日返上でやらんと間に合わんのでごめんなさい!!』  麺を無理やり口に入れて咀嚼し、喉へと流し込む。さっきまでの喉越しの良さはどこへいってしまったのか。  今週こそはと張り切っていただけに、ガッカリ感は否めなかった。  ラーメン鉢にドボンと顔をつけたい気分だったけど、精一杯平気なフリをした。 「どうかしたん?」  隣で同じようにラーメンを啜っていた小梅が、一瞬固まったことに気づいたらしい。 「ううん、別に。また土日返上やって言うから、体大丈夫かなって」  表面上はあくまでも体の心配。もちろん、本気で心配もしてるけど。 「確かにそれは心配やなぁ。ここんとこ、まともに休んでないんちゃうん?」 「そうやねん。まあ、本人もやる気満々やし、進んでやってるとこもあるけど」
/387ページ

最初のコメントを投稿しよう!

634人が本棚に入れています
本棚に追加