幸せ

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朝起きる。 あれ?目の前が茶色い。それにすごくうるさい。 (夢かな?) つねってみる。なんだかフサフサしている。 うるさいし、耳を塞ごう。耳が立っている? 起きてみる。僕は段ボールの中にいた。 多くの人が行き来する。けれど誰も見ようとしない。 とりあえず話そう。 「ワンワン、ワオーン!」 あれ?伝わらない。話していることはわかるのに。 赤ちゃんになったみたいだ。 自分の考えを上手く表現できない。 僕は犬になっていた。 こんなにイライラするものか。ろくに食べるもんもない。それに今は夏。真夏の太陽に手加減など存在しない。犬はストレスや暑さに弱いらしい... このままじゃ死んじゃうじゃないか。 この状況的に僕は捨てられたのだろう。 捨てたのは誰か。なぜ捨てたのか。 自分の思いを伝えられないのが余計に悔しい。 僕はその時後悔した。昨日の事だ。 僕は犬を捨てた。飼いきれなくなったんだ。 お金がもうなかった。だし、遊んでいる余裕がない。 これは彼のためでもあるんだ。 優しい人に拾ってもらって幸せになるんだ。 そう自分に言い聞かせた。けど違った。 犬の幸せは「飼い主といること」なんだ。 僕は勘違いしていた。 幸せっていうのは、金があることでも、好きなものを好きなだけ食べれることでもない。 最低限の生活でも、それを当たり前にいれる事なんだ。 ごめんね。捨てて。 ありがとう。教えてくれて。 目が覚めると見慣れた家にいる。 横には愛犬のくるみが寝ている。 今では当たり前になった生活だ。 贅沢な暮らしはさせてやらないが、くるみのために頑張ろうとアルバイトも始めた。 貧乏なのは変わらないし、やっぱりボロアパート暮らしだ。 けれど僕は幸せだった。 くるみといれて。 それが当たり前になって。
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