89人が本棚に入れています
本棚に追加
鉛色の空を睨むみたいな、女の子の横顔。
チョコレート味のタバコを食事代わりにして、体重を減らして。
飛ぼうとしているのは、きみの方じゃないのかな。
雲を引きちぎって、飛ぶ気だ。
「手を繋いでもいい?」
僕の方を見ないまま、彼女の唇がそう動いた。
揺れ動く甘い匂い。
唇の間の、危険物。
彼女の名前を知らない。
僕はカモメを描いている。
高みを目指して、力尽きる。
ああ。
墜落するよりも、
早く。
運命。
いま、僕は君の手を取る。
《完》
最初のコメントを投稿しよう!