雨は毛布

2/11
前へ
/11ページ
次へ
 こういうのは、良くない。  わたしにだって分かっている。  円山町のホテルに相手を置いてきた。  今ならまだ電車が動いている。  そう思ったら身体が動いてしまった。  金曜日の朝に一人になりたくない。  それだけの理由の木曜日の夜。  友達のバイト先の友達の知り合いの元彼とか、あるような無いような繋がりの相手だった。  優しそうな目をしてると思った。  がつがつした指の使い方が、痛かった。  先にシャワーを浴びている相手を置いてきてしまった。逃げた。  こういうのは、恨まれるんだろうか。  またどこかで会う可能性があると思うと気が重い。  だけど一晩過ごす気にはなれなかった。  雨が降り始めている。  アパートの最寄り駅に着く頃には、土砂降りになっていた。  排水溝が恐ろしげな音を立てている。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

89人が本棚に入れています
本棚に追加