毛先ほどのちっぽけな独白

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ねぇ、覚えてる? 抱き合った後、あなたが私の髪を撫でてくれる。私もあなたの髪を撫で返す。恥ずかしがり屋の私たちが素直に愛おしさを伝え合う、唯一のあの時間……。  みだれ髪は、乱れるほどの髪が無ければ話にならない。幽霊画に描かれるその長い髪は、必要であるが故に長く多く描かれている。恐ろしさや神秘性を強調するためだ。 髪とは何であるか? それは時に媚態としてのアイテムともなる。果たして、先人からの呪文のように『髪は女の命』であるのか?ならば、私はとっくに死んでいる。 髪の無い女は生きる屍。  石を投げれば美容室と歯科医院にあたる程、世の中の関心は髪と歯にあるようだ。今回歯については話がぼやけてしまうので脳の中からたたき出しておこう。 私とて、ついこの間まで髪がたわわにあった。人並みに髪に関心があり、幼少期は髪の長いお姫様が大好きだったが、母親の意向で短く刈られていた。
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