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#1
「ん〜...!今日も良い天気っ!」
昇りたての太陽が眠そうにも光ながら、私は伸びをした。
ここに来て、1ヶ月。
ここの生活にも大分慣れてきた。
私はカレン。
前世の名は山本加恋。普通の女子高校生だった。
しかし、私は1か月前事故で死んだ。
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「ははww何それwww」
いつも通り、仲のいい友達と数名で放課後の時間を楽しむ。
ぶらぶらと買い物をしたり、カフェでお茶したり、そんな時間が私の幸せだった。
なのに、なのに、なのに、、、
「加れっ...!!」
「え...?」
友達の話を聞きながらぼーっと歩いていたら、車が私に向かって走ってきた。
友達は私の手を引いて避けたが、間に合わず私は撥ねられ死んでしまった…
自分はこんなところで死ぬのか…
あの車、何歩道に突っ込んでくるねん。
許さん。
そんな怒り、悲しみ、喪失感が半端なかったが死ぬのは仕方ないのだ。
実は私はそこまで怯えていなかった。
先日、小説に出てくる推しのサンディ・アルメニアが戦いで死んだと読んだからだ。
サンディは小説「ブルーローズの約束」に出てくる魔王。
魔王だけれどルックスから性格まで◎、何でも完璧にこなせて、まさに主人公っ!
でも、サンディには呪いがあって…
そのせいで昔に心を閉ざしてしまう。
けれど!ヒロインのアリスによって、呪いも心の氷も溶けていく__
そして、サンディはアリスに婚約をするも断られてしまう。
その理由は簡単だ。
アリスは主人公のヒロンアが好きだからだ。
「ブルーローズの約束」の本当の主人公であるゾペロニ・ヒロンア。
ルックス良し、性格王子様、なんと言っても、公爵家。
貴族女性はヒロンアと婚約を狙っている。
しかし、底辺貴族のアリスがヒロンアに出会い、恋に落ちていく…
そんな小説なのだ。
小説のあらすじはこんな感じ。
あるところに、借金を抱えた底辺貴族のアリスという少女がいました。
少女は生まれつき不思議な魔力を持ち、ありとあらゆる生物に癒しと元気を与えているそうです。
ある日、森の中で動物達と遊んでいると、怪我をした白馬の王子様が現れました。
その王子様がヒロンア。
ヒロンアは、隣国との戦で怪我を負い、逃げてきたそうです。
そのことを知ったアリスは
「私達、お国のために戦って下さりありがとうございます」
と深々礼を言い、魔力を使って怪我を手当したのでした。
その日以降、ヒロンアはアリスに会いに、何度も森へ訪れました。
彼女は初めは怪我の手当の礼だと思い込み、遠慮がちに接していましたが…
ヒロンアの優しさ、面白さに徐々に惹かれました。
ヒロンアもアリスの温かさや優しさを好み、互いは惹かれあったのでした。
しかし、ヒロンアは戦が激しくなり、隣国へ行くことになったのです。
ヒロンアと会えない日々が続く中、アリスは戦い中に隣国からやってきたサンディと出会うのです。
サンディも怪我と呪いを背負いながら、ヒロンアの国に迷い込んでしまうのでした。
そこで、心優しいアリスは敵国だと知らずに、サンディの怪我を手当し、呪いを解きました。
サンディはそのことを感謝し、呪いを毛嫌いしなかったアリスに惚れたのでした。
一方、アリスはヒロンアを恋しく思いました。
すれ違う3人の想いを儚く書いたこの小説はとてもヒットし、ファンも沢山いた。
しかし、そのファンは大抵がヒロンア推し。
サンディは小説の中でも、現実でも、あまり好かれてなかったのだ。
私はそんな中、サンディの切なさに同情し、サンディを調べだした。
その結果、サンディの沼にハマってしまった。。。
しかし、嫌われ者のサンディ推しは中々いなくて…私も言い出すことが出来ない。
なので、サンディ推しだと知っているのはさっきの友人達ぐらいなのだ。
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「なんか、前世のこと思い出しちゃったな…」
私には何故かと前世の記憶がある。
前世の記憶を活かしつつ、この、異世界でどうやって生きていけばいいのだろうか。
1ヶ月経った今でも、よく分からない。
諦めの早い私は考えることをやめ、ここでの生活を思いっきり楽しむことにした。
いや、楽しむ予定だった。
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