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彼女は金がないのだと言う。
だから、強盗に入ったのだと言う。
引っ越しの金すらないのか、と私は聞いた。
彼女は、はじめて驚いた顔をした。
当たり前だろう、自分のそんな私生活を、私が知ってる訳はないと思っていただろうから。
私は言った。私に何をしてもいいから、どうか、引っ越さないで欲しい。私の傍にいて欲しいと。
戸惑いながら、彼女は拒んだ。逃げなければいけない差し迫った事情があるのだと言った。
なので私は、一昨日の夜、自室で男を絞殺した件かと、尋ねた。
彼女は、さらに驚いた。
でも私からすれば、当たり前のことだった。その夜も、私は彼女の声を、つまりはことの一部始終を床に耳を付けて聞いて居たのだから。
彼女は、ただただ驚いた。
唖然とした彼女の前で、そのとき、私の目に入ったのは、痴漢対策に身につけていたスタンガンが、鞄からたまたま畳に転がっている光景だった。私は咄嗟にそれを手に取った。
形勢は逆転した。
そして、いまや、手錠に繋がれているのは彼女だった。
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