模範的な関係

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 こうして、私たちは同じ部屋で、いっしょにご飯を食べ、いっしょに眠りに就く。が、ただ、どんな時も絶対に、変わらないのは、どちらかが、必ず手錠に繋がれていることだ。  それだけは、どんなに私が彼女のことを信じていても、または彼女が私のことを信じていても、契約事項として、遵守することにしている。  ……私はこの、連綿と続く、長閑な日々のなか、たまに思う。  いつか、そう遠くないとき、こんな私たちの日常も終わるのだろう。  それは、彼女か私かどちらかがなんらかの理由で死んだときに、他ならない。  だけども、私も彼女も、今やたいそうこの契約関係が気に入っているから、彼女が私を亡くせば彼女も死ぬだろうし、私が彼女を亡くせば私も死ぬだろうことは、なんとなく予感している。  そのとき、私たちの遺体を発見するのが、誰かは分からないけれど、願わくば、ふたつの死体をこれ見よがしにスキャンダラスなミステリに結び付けず、生前の私たちの、規律に満ち対等かつ、模範的な関係を、理解してくれる人だと良いな、と私は思う。
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