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ケイマストラ王国王家
カタリナ・シェリル・メイリスシール・ケイマス。
それが、ケイマストラ王国国王の第四子にして第1王女である彼女の正式名だ。
セリス・ゼミニは、涼しげな表情で廊下を歩き切り、自室に戻ると、扉をきっちりと閉めて、大きく息を吐いた。
なんなのだ、なんなのだ、あのかわいらしさは、もはや凶悪と言うしかないだろう!
大声で叫びたい。
もちろん、しないけれども。
身分違いは骨身に染みているけれど、自室で悶えるぐらいは許して欲しい。
だって年頃の男なのだから。
セリスの父は、現国王に信頼される侍者だけれど、身分はとなると、王女が降嫁しても納得してもらえるほどの地位とは言えない。
侍者の家系は、高位騎士に次ぐ地位を与えられているが、それは貴族よりも下位の立場であることを示す。
騎士は、高位の序列に加わることができれば、貴族としての称号を得て、王女にも手が届くけれど、近年、安定した国状を考えれば、活躍の場などあるわけがないし、一介の騎士から昇り詰めるなど、幻のような夢を見るに等しい。
そんなものに縋るよりも、セリスは、想う人の側にいたかった。
もう、その時間もあまり、残されてはいないけれど。
あの輝きを。
今は記憶の棚に、大事に仕舞っていくだけだ。
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