まとわりつく砂、その背中

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まとわりつく砂、その背中

「あ、暖人(はると)寝てる」 「埋めてやろ」 砂浜の上ですやすやと、惜しみなくその端正な顔立ちをさらけ出して彼は寝ていた。 そうなれば格好の餌食と言えよう、誰かが1人声を上げれば、俺も、私も、と皆が彼を囲む。 あっという間に見えなくなった彼の姿が次に私の視界に入る時、きっとあるのはその美しい顔だけなんだろうな。想像するだけで笑えてくる。 「奏音(かのん)も共犯者になろうよー」 「私はいいや。いい人ぶって暖人にアピールする」 「え、奏音、暖人のこと好きなのー?」 「うん、好きだよ」 私の一言で、友人達は一斉に振り向いた。完全に冗談だと思って、私にその問いを投げかけた友人も驚いて目を大きくしている。そしてどういうことだと私に近づいてきた。その時にチラッと見えた暖人は既に灰色の塊になっていて、それでも爆睡し続けてる彼に感心する。 「えなに、いつから、いつからなの」 「え、最初からだよ?一目惚れ」 「や、それは分かるけどさ、確かに暖人かっこいいから一目惚れするのは分かるけどさー、 ……クズじゃん」 ばっさりとそう言葉にした友人に、周りの友人達もうんうんと頷く。 「そうそう、優しく言ってヤリチンだよね」 「生々しくて今まで避けてたけど、ここにも何人か姉妹がいるよね」 「うわ、やめよこの話。とにかくおすすめはしない。けど確かにセックスは上手いよこいつ」 好き放題言って彼女達はもう興味をなくしたのか、海の方へ走ってしまった。その後ろ姿が眩しくて思わず目を細めてしまう。うまく言葉にできないけど、私は彼女達が羨ましいのだ
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