みたされる心、その渇望

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「奏音、来週の休み空いてる?」 「空いてるよ、どうしたの?」 「記念日じゃん。せっかくだから遠出しないかなと思って」 「いいね、行こう」 「やった」 紅葉とか見に行くのもいいよなー、とウキウキしながら暖人はスマホで近くの紅葉スポットを検索している。相変わらず綺麗な顔をしていて、長いまつ毛が何もしてないはずなのに上を向いていた。くるんと、音がしそうなくらいに綺麗に上がっているそれに、ゆっくりと触れれば、「奏音、スマホ見えない」と冷静に返された。 「なんかたまに変なことしてくるよな」 「暖人のまつ毛可愛くて。羨ましい」 「奏音のまつ毛だって綺麗じゃん」 「私のは人口だもん」 毎日少しでも目が大きくなるように、ビューラーで綺麗に上げてから、マスカラを丁寧に塗って。ダマにならないようにコームでとかして仕上げるのも、今みたいに暖人が至近距離で見つめてきても幻滅されないようにだ。 「大丈夫。すっぴん穴が空くほど見つめてるけど奏音は長くて綺麗なの知ってる」 「すっぴんは穴が空くほど見つめないで欲しいなあ」 「大丈夫。化粧してる時も見つめてるから」 「私の話聞いてないよなあ」 くすくす笑いを零せば、スマホに目を向けていた暖人がこちらに視線を向ける。そのままポイッとスマホを放り投げ、私に手を伸ばしてきた。大きめのパーカーを着ている暖人の指は袖口から少ししか覗いていない。うーん、萌えるなあやっぱり。
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